これからも妻といっしょに

がんで無くなった妻。その魂と引き続き共に歩みます

「子供はいらない」と言った妻

そろそろ、妻へのプロポーズの時期をちらちらと考え始めた頃
妻との交際が順調に続いていたある日、


妻はきわめて重たい難題を私に持ちかけてきた。


妻は、
「私は、子供はいらないんです。」
と私に打ち明けた。


そして、「○○さん(←私のこと)が、
どうしても子供が必要と思っているのなら、別れましょう。」
と切り出してきた。


私は、妻の予期せぬ問いかけに、おどろき、即答は出来ず、
返事は数日待って欲しいと答え、その日は別れた。


翌日、会社で仕事に集中できず、
答えを見つけることで頭がいっぱいだった。


「子供はほしいが、そうなると妻との結婚はなくなる。
どうすればいいだろうか」
3日ほど考えた。


結論として、私は、妻を選んだ。


妻がいない生活を想像すると、
何とも表現出来ないやるせなさが
湧き上がって来た。


子供のいない生活であっても、妻がいれば、
この決断は後々、後悔することはないという確信か
沸々と湧き上がってきた。。


そして、会社から帰宅して、
妻にそのことを伝える電話を入れた。
(この時期、私はまだ携帯を持っていない)


妻の、“子供を産まない考え”は、
どこから来ているのだろうかと考えた


妻は、結婚後、一度だけその考えを私に言ったことがある。


それは
「じぶんが子供みたいなものだから、子供が子供を育てることは出来ない。
自分のような人間がこの世にもう一人生まれない方がいい」
と、厭世的ともいえる言い方をした。


妻といっしょに生活していると、
妻の言っていることは、あながち間違っていないとも感じていた。


妻が持っている「生きるためのエネルギー」は
他の人に比べてとても小さく、
自分を生かすためだけで、いっぱい いっぱいのように見えたからだ。


親になりたくない理由は、本当にこれだけなのか、
他にも理由があるのではないか、
とも考えたりしたが、
そこまで妻の心の中を見ることは出来なかった。


子供を産まないという選択をした女優が何人かいる。


昨年10月に80代後半で亡くなったY、現在70代の有名な女優Y、
主人も有名な俳優で仲良し夫婦の50代のY、
が頭に浮かぶ。


3組とも、夫婦生活は円満で、
離婚とか浮気の気配を感じさせないところが
共通点だ。


私たち夫婦も、その点は同じだった。


ただ、3人とも、
幼少時に父を亡くす、両親との確執、家族離散の生い立ち
等、
それぞれ、“複雑な生い立ち”があり、
“家族への思い”があまりなかった
という記事を見たことがある。
妻はどうだったのだろう。



一緒になるという決断 をした私に対して、
一生懸命尽くそうとする妻を日々感じていた。


いろんな生き方があっていいと思っている。
一人のその生き方に合せることで、
二人が幸せになるという形があっていいと思う。


24年半という期間は、満足ではないものの、
私のあの時の判断で、
妻との幸せな生活を送れたことは、
本当によかったと思っている。


今、考えてみて、
あの判断は、
私が判断したというより、
見えない何かが
そう導いたようにも思える。


「運命」という力が働いたのかもしれない。

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