これからも妻といっしょに

がんで無くなった妻。その魂と引き続き共に歩みます

妻との海外旅行(がん進行中だったとは)

妻と行った海外旅行は
22年勤めた会社の次に、5年間勤めた会社を辞めるまでの間
有給の一部を使って
2004年8月に「香港」


最後に勤めた会社を辞めた後、
2016年2月に「イタリア」


2017年2月に「ナイアガラの滝・ニューヨーク」
の3回だ。


ちなみに新婚旅行は、妻から飛行機がダメだと聞いたことで、
山梨を自家用車で廻った。


2月になると、妻と行った海外旅行を思い出す。


妻ががんのステージ4の告知を受けたのが2017年5月。


ということは、イタリアの時は1年3ヶ月前、
ニューヨークの時が3ヶ月前ということになる。


イタリア旅行の最中、既に体の中にがん細胞が存在していたと思われる。


ミラノ、フィレンツェ、ヴェネツィア、ローマを廻った。


2月は旅行会社も閑散期であるため、人気のある時期の旅費に比べて4割程度で行ける。
旅行会社はこの時期に学生の卒業旅行をかませて、空白を埋めようとする。
そのため格安料金になる。
それに私たち中高年が便乗したということだ。


女子大生のグループが主流で、中高年の夫婦は私達を含めて3組だったと記憶している。
ホテルの内容が心配だったが、十分満足出来るものだった。


ツアーの最終日、オプションツアーは選択せず、フリー行動を選択した。
バチカン市国、コロッセウムを廻ることにした。


午前中、バチカン美術館に行った。
入り口から出口まで2~3時間かかった。


今考えると、妻にとって、体に対する負担はかなりのものだったと思う。
妻は何も言わずに付いて廻った。


午後、コロッセウムに向かった。
途中、地下鉄の中で、妻は「疲れたので、ホテルで休む」と言い出した。
私はせっかく来たのにと思ったが、
妻がそう言うのならしょうがないと思い「わかった」と答えた。


しかし、しばらくして「やっぱり行く」と言ってきた。
妻はいたずらっぽく「1人の時間が取れると思ったのに、残念でしょう~。」と言った。
私は「そんなことないよ。」と答えた。


コロッセウムに到着、入場券を2人分買いに行こうとしたら、
妻は「私はこのベンチで待ってるから、のらちゃん1人で見てきて」
と言った。


せっかくここまで来たのだから、入ればいいのにと思ったが
妻がそれでいいと言っているのだからしょうがないかと考え、1人で見学した。


以前何度か行った、はとバスの日帰り旅行の時も、
歩く距離が長い場所の場合、妻は見学に加わらず、
ベンチで待つということが多かった。


妻の旅行に対する目的は、私と一日いっしょに行動することに喜びを
感じるのであって、見学には関心がなかったように思える。


私も海外旅行の目的は、世界遺産をこの目で見たいというより、
その国の人の日常を見ることであり、地下鉄などで普通に会話している様子を見て
異文化を体感することの方に興味があった。
それでも、ここまで来ているのだから、見学するのが普通の行為だと思った。


この様な妻だから、こういうのは、特に気にならなかったが、


がんの進行の影響も少なからず受け始めて来ていたのかもしれないと、
今になって思う。


翌年行った「ナイアガラの滝・ニューヨークの旅」も、
同じ旅行会社の同じ企画の中から選んだ。


最初に行ったナイアガラの滝では、夕方滝を見学、その後ホテルに入った。


夕食後、希望者は添乗員といっしょに夜のナイアガラの滝を見に行くことになった。
妻は参加せずに部屋で休むと言った。


滝はホテルから歩いて5分位なので、当然妻も行くものと思っていた。
私は1人で夜の滝を見に行った。


次にニューヨークに移動して「自由の女神」や「メトロポリタン美術館」に行った。
ここでは妻と行動を共にした。


最終日はフリー観光。
ホテルの1階で、朝食を二人で取ったが、
妻は「今日は部屋で一日休む」と言った。
私は一人でニューヨークの町を見学した。


翌日、帰国するため空港に到着。
搭乗するまで少し時間があり、ツアー客は空港内でそれぞれの時間を費やした。


この間に私と妻は大げんかをした。
と言っても妻が一方的に私を責めるというものだが。


椅子に二人で腰掛けていて、
妻が「何か買って来ようか?」と聞いてきたのだが


私はお腹が特に減っているわけではなかったので、何もいらないと答えた。


妻は立ち上がって、何か買ってくると言って売店の方へ向かった。
すると私の分もいくつか買ってきた。


私が「いらないって言ったじゃない。」と怒ると


妻は私のその態度が余程気に入らなかったのか、強烈に怒り始めた。


「倹約することばっかり考えて」というのが、妻の怒りの理由だ。


私が怒ったのは、お金のことではなく、
相談なく勝手に私のものを買うという行為だったのだが。


これまでも、私の部屋の棚などを、
私に確認せずに何度か買うことがあった。


狭い部屋なので私なりにレイアウトを考えているところに、
妻は、こちらの考えているものと違うものを
一度ではなく何度も買ってきた。


妻は自分のやったことを否定されると
余計に同じことをやろうとするところがあった。


飛行機の機内でもずっとこちらを責め続けた。


この時の3ヶ月後にがんの告知が待っている。


こういう喧嘩も少なからず体の中の免疫を弱らせたはずだ。
今となっては、後悔の一つになる。


新聞を見ていて、
旅行会社の海外旅行広告が目に入る。


一瞬心が動くが、
それは、「自分に関係のない広告だ」とあらためて気づき、
次のページに新聞をめくる。

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