これからも妻といっしょに

がんで無くなった妻。その魂と引き続き共に歩みます

癌 告知から亡くなるまで 妻と過ごした137日 ⑨

6月19日、私は妻には内緒で、免疫細胞療法の無料セミナーへ出かけた。


妻は一度決めたらぶれることのない人で、
痛み止めだけを服薬しながら静かに亡くなることを決めている。


私がこういう所に行くことは妻の選択を揺さぶることになり、
妻が激怒することは明かだからだ。


そういうことなのに、なぜそのようなセミナーを聞きに行ったかというと、
妻が助かるあらゆる手段を自分なりに頭にだけは、入れておきたかったからだ。


セミナー参加者は、がんの治療中の人やその親族の人で約10名ぐらいだった。
最初、ある有名な俳優が抗がん剤や放射線治療行わず、
手術のみ行い、NK細胞(自然免疫)による治療を行って、
今も元気に暮らしているという話から始まった。


免疫治療の説明、そして治療費の説明があった。
50万×5クール=250万円
その後、継続するかどうかは、相談して決めるというものだった。


すべてがうまく行くことはないという説明もあり、
見ていた限りでは、よく聞くあやしい団体ではないように思えた。


妻は起きている時は、週刊誌ばかり読んでいる
その中には、がん治療関係の記事が載っているものもいくつかあった。


6月20日、
「最近の痛み止め薬はよく効き、最終も痛みはほとんどないのよ」と妻は私に話した。


ハチ(近所にいた柴犬)の遺影(拡大したもの)をベッド隣のケースの中へ入れた。
亡くなったとき棺に入れてほしいということだ。


6月21日、
義姉よりメールが妻に来ている。
義母より妻にアイスクリームが送られてきた。
そして私宛に電話があり、妻が度々トイレに行かざる終えない状態であることで、
「夜中起こされて大変でしょう。」と私を気遣ってくれた。
私は「全く問題ありません」と答えた。実際そうである。


夜、二人でテレビを見ていた時、
妻がテレビ東京にチャンネルを変えてほしいと言ってきた。


妻がチャンネル指定することはあまりないので、どういう番組だろうかと思って
チャンネルを変えると、「家について行っていいですか」という番組だった。


最初見ていてバラエティー風であり、
どうしてわざわざこの様な番組を指定したのだろうかと思った。


見ている内に、がんで妻を亡くした男性の家について行く場面があった。
妻が使っていたものや写真を見せ、目を潤ませて妻のことを話す中年男性の姿があった。


それを見て泣きそうになったが、妻が横にいるのでぐっと涙をこらえて見終えた。


妻がこの番組を指定した理由がわかった。


自分が亡くなっても、私のことを思っていてほしいという
思いからだったということが。


今も水曜日には、ベッドに横になりこの番組は必ず見ている。
妻の定位置だった、右側に空間を設けて。

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