これからも妻といっしょに

がんで無くなった妻。その魂と引き続き共に歩みます

癌 告知から亡くなるまで 妻と過ごした137日 ⑱

2017年
8月11日
妻「ムース食、もう買わなくていいよ。
新しいものを食べるとお腹を壊すかも知れないから」
 残った数日分のムース食弁当は、私が食べることになった。


妻は、私の部屋の鏡で自分の姿を見ながら、
「ガイコツみたい」と言った。


私は、妻の落ち込みを緩和する言葉を探した。
「身体は痩せても、心は痩せないから大丈夫だよ」
と言うのが精一杯だった。


8月13日
妻が洗濯をして、
私が洗濯物を取り込み、
妻がたたんだ。
次回から、最初の洗濯からを私がやるということにした。


8月14日
午前中、私は、ガンを克服した男性(余命1年の告知あり)のブログを
2時間ほど読み続けた。


11:30 妻はケアマネージャーのI氏に電話をして、オムツの注文をした。
14:30~16;00 私は風呂の掃除をした。


夕方、妻から、100円以下のスポンジ状のチョコレートを買ってくるように
頼まれた。「絶対100円以下で」と強調する。


私は「300円であっても買うかも。お金余っているから」
と答えて出かけた。


8月15日
妻は、
風呂のお湯入れ、自分の食器の水洗い、洗濯(妻がやるのは今回最後)を
行った。
トイレは、まだ何とか自分で行けている。 


妻は、私に洗濯の手順を書いたメモを私に見せながら、一生懸命に説明した。
妻らしい不器用な説明だった。
私は、こういう妻が、誰よりも好きだった。


12:25~12:40主治医のS先生1人での往診があった。
(いつもは男性の看護師が同席して会話をパソコンに入力している)


血圧122/68 脈拍100 経皮的動脈血酸素飽和度 (SPO2)99%


妻  「立ちくらみがあります。風呂は3~4日おき。痛みはありません。
MSコンチンがよく効いています。水薬は必要ないです。
MSコンチンのもっと強いのをお願いしたいです」


主治医「出来ますが、強いのを早く使うと後で効かなくなる場合があります。
痛みの程度に応じて調整して行きます。
疲れやすいので無理せずに休みながら療養するようにしましょう」


妻  「食欲はありません。吐き気はありません。
他の人で死んでいく心境はどうですか? 1年で行けそうですか?」


主治医「何とも言えません」


「高額医療認定書」を主治医に見せた。


午後 
妻「しゃべり方がよそよそしくてごめんね。
前は部屋に毎日通っていたのに。(妻の部屋から私の部屋へ ということ)


体がいうことを効かないので。


頭の中はそちらに全て向いているのだけど。」


私「自然にしていればいいよ」


妻「仕事の作業やろうか?」
 (私は、アルバイトの書類作成のための入力作業を、
今まで、何度か、妻に手伝ってもらっていた)


私は「何もしなくていいよ」と答えた。


夜、
「仕事やってないの?」と妻が私に問い正して来た。
せっかく協力しようとしたのに断わられたことが
気に入らなかったのだと思われる。


仕事に関する会社とのやり取りが記された“Line”の画面を見せ、
更に、直近の給与明細を見せることで、
妻は、納得した。


妻は、今までの結婚生活の総括をするため、
“やってきたことを、最後にもう一度やりたい”
という思いがあるのではないだろうか。


8月16日
私は、
妻から依頼されたシチュー4袋と
免疫を高めると思いR-1ヨーグルト3個を
100円ローソンで買った。


夜、
妻「トイレ流した?」
妻は以前からトイレの水流しを2回やらないと、クレームをつけてくる。


それとは別で、部屋に便の匂いがするのを感じた。
そう感じている時、
妻が「冷蔵庫の中、ものすごい臭いがする」と言った


妻から出ている匂いということは分かっていたが、
妻を傷つけたくなくて、私は「あっ、そう」とだけ口にした。


寝る前、妻は私に言った。
「今日もありがとうね。身体が悪くてくっつかなくなったけど、
愛情はあるのよ。」と。
(妻は、一緒に寝るとき、子供が親に抱きつくような感じで、寝る人だった)


8月17日
部屋内の匂いを緩和するため
私は、アルバイトの帰りに、芳香スプレーを購入した。


8月18日
朝、私がアルバイトに出かけようとすると
妻が「下の100均で水買って来てくれる?」と言った。


私が「これから仕事なので帰ってから」(強めの口調で)
と答えると


妻は「いろいろありがとうございました。死んでいきます。」と言った。
(少し必死の様相で)


私は、
“アルバイト”と“妻の要望”のどちらが重要かということに対して
鈍感になっていた自分に気づいた。
すぐに水を買いに行き、妻に渡した。

自分のために何かをやってもらってることで愛情を感じたいのだろう。
言葉の愛情と行動の愛情両方が必要だと思った。



「洗濯はヘルパーがやってくれるだろう」と私が言うと、
妻は「いや、のらちゃんにやってもらいたい」と言った。
“夫婦の一体感”が減るのを避けたかったのかもしれない。



外から聞こえる、カラスの鳴き声が多いのが気になる。


妻が亡くなるまで、あと49日

×

非ログインユーザーとして返信する