癌 告知から亡くなるまで 妻と過ごした137日 ⑲
8月19日
妻は、「トマトが食べれなくなった。」と私に言った。
私は初めて、洗濯から折りたたみまで、妻なしで行った。
8月21日
アルバイトに出かける時、
私が「行ってくるよ」と言うと、
妻は、「じゃあねー」と、
久し振りに張りのある声で答えた。
やっぱり元気な妻はいい。
エネルギーをもらえる。
アルバイトから帰って来た時、
洗濯物の取り込みを、妻はやってくれていた。
8月22日、
11:30 主治医の往診があった。
妻 「だるさ、筋力低下軽減の薬はありますが?」
主治医「今のままでいいです。休みながら水分を取って下さい。」
昼、
妻「下の100均で水買ってきてくれる」
私「まだ1本あるよね・・・・。 ああ、安心感のためね。わかった」
8月23日
夜、ベッドの上で寄り添っていたが、
食事をしようと思い、私がベッドから離れようとすると、
妻は「逃げるんか」と、おどけた感じで声をあげた。
私が、自分の部屋に戻るのかと思ったようだ。
。
私は「食事だよ」と言って、妻の横を離れた。
ここ数日、妻らしさが見られ、
ほのぼのとした、気持ちになれる。
8月24日
午後、
私は、無料の「免疫治療に関するがんセミナー」に、妻には内緒で行った。
このことを話すと、妻は間違いなく怒るので・・・。
無駄なことをしているとは思うが、情報は取っておきたいと思っている。
帰りに、業務スーパーに寄り、妻の好きなゼリー等 を買い貯めした。
妻は、久し振りに風呂に入った。頭も洗った。
体重36㎏
8月25日
外から帰ると、妻は洗濯をやってくれていた。
妻が注文していたオムツが届いた。
8月27日
妻から頼まれ、私は100円ローソンへ行き、シチューを5個買った。
8月28日
私は、マンションの1階にある100均で、頼まれたパイナップルジュース2本を買った。
8月29日
ケアマネージャーの I さん来訪(私は外出中)
11:50 主治医の往診があった。
血圧132/74 脈拍114 経皮的動脈血酸素飽和度 (SPO2)98%
妻 「具合が悪くなっても死なないんです。困っています。早く逝きたいんですけど」
主治医「どうですかね。今は痛みを抑える事を考えて・・・」
妻 「薬を飲み忘れて痛みが出ましたが、その後、薬を飲んだら良くなりました」
主治医「痛み止めがよく効いているようなので、1日2回を基本に、内服してください。
痛みが強いときは、1日3回に増量することも可能です」
8月31日
妻はシーツを汚していた。
浴室も汚していた。
私は、浴室を掃除した。
妻「風呂、汚した。ごめんね。S先生(主治医)に便を固める薬がないか聞いてみるよ」
妻はケアマネージャーの I さんへ電話をして、オムツの追加注文した。
ベッドにいるとき、妻は細くなった自分の両腕をまじまじと見つめていた。
そのような妻の姿を見るのが辛い。
昼、妻は、パソコンに何か入力している。
私は、区役所で「高額医療還付申請」を終え、
家に帰り、妻に報告すると、
妻は「のらちゃん頭いいから、○○(くらしとお金に関する資格)持ってるし」
と言って私を褒める。
この資格は、それほど、難しい資格ではない。
なのに、妻はいつもこういう風に私を褒めるのだ。
私が持っている他の2、3の資格に対しても、
同じような褒め方をする。
当初は「馬鹿にしているのでは」
あるいは「褒めて自信をつけさせて、仕事を頑張ってもらおうとしているのか」
とも思ったが、
どうも本当に「すごい」と思っているようだ。
天然なのだ。
夜、
妻は、ベッドで横になっている私に覆い被さってきて、
鼻にしわを寄せて、顔を私の顔に近づけ、
“クンクンクン”と私の顔を嗅ぐ動作をしてきた。
これは、犬の動作を真似ている訳で、妻が良くやる行為だ。
久しぶりに妻は私を笑わせてくれた。
面白い妻を見ると、心が軽くなる。
妻が亡くなるまで、あと 36日