これからも妻といっしょに

がんで無くなった妻。その魂と引き続き共に歩みます

私の妻 ② 運動神経

腰痛のため5年間休んでいたテニスを再開しており、
先日、テニススクールに行った。


テニスを終え施設内のシャワーを浴び、自転車で帰ろうとすると
突然カラスが鳴き声をあげて飛んできて、頭上にある電線の上に飛び乗った。


そして、その上で足踏みを始めた。


その瞬間、私は「あっ、また妻が現れた」と思った。
というより、思おうとした。


私はそのカラスの動作を少し見た後、
自転車に乗り、10メートルほど走ったところで、
一度振り返って電線を見た。
すると、カラスの姿は無かった。


妻が私に近づいたのか、
そうではなく、人懐っこいカラスだったのか。


今回の出来事を妻の行為と見るのは、少し厳しいかもしれない。



会社勤めの頃、私は毎週土曜日の朝、9時前に家を出てテニスをしていた。


休日の始まりで、体を休めたい気持ちもあったが、テニスを優先していた。


「テニス、行ってくるからね」と言う私に対して、
妻の私を送り出す言葉は、


「やめなさい」であった。
嬉しそうな「やめなさい」だった。


妻自身はスポーツはやらない人だったが、
私がテニスをすることには好意的だった。


妻は見るからに、「運動は無理だな」という感じがする人だった。
お姫様的な動きをする人だった。


妻は、運動音痴な自分を逆手にとって、
昔のエピソードを私に聞かせ、
私が笑うのを見て、いつも嬉しそうにしている妻だった。


そのエピソード


・中学の体育の授業で、
バスケットの試合中、一度もボールに触らないで
終わってしまうことが多かったとのこと。


ボールのところに向かって走るのだが、近づいた時には、
ボールは別の人に渡っていて、
それを繰り返しているうちに試合は終わっていたとのこと。


・学生時代、
バーゲンで、ある人気商品を、買ってくるように、
母親から頼まれた妻は、
デパートの入り口で、1番前に並んでいた。


ドアが開くと同時に、商品の置いてある場所に走り始めたのだが、
後ろに控えた逞しいおばさんたちに突き飛ばされ、床に倒れ、追い越された。
立ち上がって目的地に到着した時には、
その商品は無くなっていたという話しだった。


それを聞いて笑う私を見て、妻は嬉しそうだった。


・妻は自転車も乗れなかった。


学生時代、友人に指導を受け、挑戦したことはあったが、
乗れるまでに至らず、諦めたそうだ。


妻とテニスはしなかったが、
卓球はしたことがある。


伊東に一泊旅行をした時、
旅館の中に卓球台があったので、
妻と30分くらい、ラリーをした。


この様子を撮ったビデオ動画はパソコンの中にあり
時々再生して見ることがある。


妻は失敗する度に、口に手を当て、「ふふふ」と笑う仕草をする。
「可愛いな」と思う。


運動神経の悪さが、本当に似合う人だった。
とても“癒やされる人”だった。

×

非ログインユーザーとして返信する