「死にたい」?
闘病中、主治医の先生の往診時、
妻は、
「他の人で死んでいく心境はどうですか?1年で行けそうですか」
「早くお迎えが来てほしいんですけど」。
「具合が悪くなっても死なないんです。困っています。
早く逝きたいんですけど、どうですか」
など、先生が答えに困る質問をしていた。
妻が発した言葉を額面通りに受け止めると、
「生きるのも辛いし、早く逝って楽になりたいのだろうか」
と、考えてしまう。
本当にそうなのか。
昨日、私は、図書館に行った帰りに、100円ローソンに寄って、コロッケを買った。
私は、食品を買う時、パックに表示されている賞味期限を見るようにはしている。
この日も、賞味期限に目をやった。
その瞬間、
妻の闘病中のことが思い出された。
妻は、100円ローソンで「混ぜご飯」を買って来るよう私によく頼んでいた。
その時必ず賞味期限の指定をしていた。
例えば「○日午前3時表示のものは買わないように。
翌日午後3時表示のものがあれば買って」
という風に。
他にも「ビタミンレモン飲料を買って来て」と、よく頼まれていた。
今考えると、
ビタミンCが、がんに対して免疫力があるということを
妻は調べていたのだと考えられる。
このように、妻が、食べ物に気を遣っていることが分かる。
「死にたい」は、
妻が、表面上、そう言っているのであって、
裏に隠された本人の本当の気持ちは、
「生きたい」だったはずだ。
「生きたい」と口に出してしまうと、
死が目の前に迫った時、
気持ちと逆のことが起こる怖さに出会うことになる。
それを避けるために、
あえて先手を打って「死にたい」と言っていたのだろうか。
「生きたい」と思っていたはずの、
妻を助けられなかった自分の無力さに胸が痛む。