癌 告知から亡くなるまで 妻と過ごした137日 ②
前日、余命1年の告知受けたことを妻から伝えられ、
5月24日午前、今後の治療の方向性を決めるため
ふたりでクリニックに行き医師に会った。
前日先生が妻から聞いた内容として、
奥さんは、数年前に膵臓癌の手術を行いその後亡くなった父親の病院での生活を見ており、手術は希望しないと言われていると、私に話した。
命の長さよりも、残りの時間、質を重視した生活を送りたい
というのが妻の考えだ。
余命1年と言っても、1年半の人や半年で亡くなる人もいる。
手術で癌を取り除けば余命が伸びる可能性も無くはない。
ご主人はどう思われますかと聞かれ
私は手術をして少しでも長く生きていてほしいので
手術を受けてほしいと考えるが、決めるのは妻であり、
本人の選択を尊重します と答えた。
話し合いのなかで、妻は手術の選択を考えている様子が少し見られた時もあったが、
結局手術をしないという当初の考えは変わらなかった。
そしてふたりでクリニックを出た。
午後、
ふたりで15分ほど歩いて国立がんセンターへ行き
看護師さんから
解熱鎮痛剤:ロキソプロフェン 鎮静剤:ゾルピデム
の処方箋を出してもらい
帰り道途中の調剤薬局で薬を受け取った。
5月25日、私はアルバイトに出かけた。
私は2年前、会社を自主的に辞め、
週3日をアルバイトの日とし、空いた時間を、
65歳以降も続けられる社会活動探しに充てていた。
妻とのより充実した老後生活を目指しての選択だった。
アルバイト中、今まで経験のない重い辛さが体を覆い、
これは本当に現実なのかと頭の中で、繰り返し問い質した。
帰宅すると、妻は早々と、在宅療養支援診療所一覧を
近くの大病院から手に入れていた。
ベッドにふたりで横になって、
一覧表を見ながら、どの診療所にするかを話し合った。
診療所のパンフを見ながら
「結婚式場選びみたいだね」と
妻は笑いながら言った。
すでに死を完全に受け入れているよう見え、取り乱すことはない。
心の中がそうであるかは分からないが・・・・・。