“見える妻”と“見えない妻”
妻は、見えない人になった。
以前は見える人だった。
私は24年半見える妻と付き合った。
見えない妻とは3年と2ヶ月付き合い、
今後、私が死ぬまで付き合うことになる。
この2人の女性は、似てるようで似ていない。
“見える妻”とは、直接会話が出来た。
“見えない妻”と会話をするには、通訳がいる。
通訳は、私の脳が行なう。
このように
“見えない妻”との付き合いは、楽ではない。
“見える妻”は、触れることも出来た。
“見えない妻”は、触れることは出来ない。
そのかわり、
私の体の中に入り、私と、一体になることが出来る。
悪い点ばかりではない。
物理的に妻は死んでしまったが、以前と変らないこともある。
今も一緒に生きている という感覚だ。
私の心の中で妻は生きている。
妻と一緒にいると感じるとき、
その感覚は、
私に生きるエネルギーを与えてくれる。
とはいえ、
人間、見えない人を、
頭の中に再現させ、傍に引き寄せるには、
かなりのエネルギーを要する。
想像力をフル回転し続けなければならない。
それでも、エネルギーを出し続けられるのは
そうすることは、私にとって十分価値があることであり、
嬉しいことだと思っているからだ。
だから、それは、気持ちのいい疲れだ。
スポーツをやった後の疲れに似ている。
幸い、
私には、多くの蓄積された妻との思い出がある。
それをもとに、
私の頭の中に、よりリアルな妻を描き、
その妻と、残りの人生を歩んでいきたい。