これからも妻といっしょに

がんで無くなった妻。その魂と引き続き共に歩みます

後ろを向いて、前へ進む

「後ろ歩き」というものがある。


進行方向を背にした歩き方だ。
健康にもいいと聞いたことがある。


「後ろ歩き」は、「後ろ向き」とは違う。


なぜなら、後ろを向いていても、前に進んでいるからだ。


前へ進むのなら、形はどうでもいい。
見栄えは必要ない。
多少歩きにくくても、問題ない。


よく悩んでいる人に対して、
「いつまでも過去に縛られないで前を向いて歩きましょう」
という励まし方がある。


一般的には、悪くない励まし方だ。


しかし、一般とは違う「死別経験者」に対しては、
ほとんど、励ましの言葉にはならない。


ただ、
励まそうとしている人も、なかなか言葉が見つからない中、
相手を思って、なんとか口に出した言葉なのであり、


その心遣いは、察しないといけない。


死別経験者であっても、「前向き歩き」が出来る人は、
その方が歩きやすいし、
出来るのなら、そうした方がよいだろう。


過去のことに執着せず、前を向いて歩く姿は、素晴しい姿だ。


しかし、
それが出来ない人は、「後ろ歩き」をすればいいと思う。


「後ろ歩き」にも、いい点はある。


後ろの背景、すなわち“過去の思い出”をずっと見ながらも、
前に進んでいることだ。


私は、これから先、
「前向き歩き」が出来ないことは、分かっている。


ならば、
「後ろ歩き」を、いかにスムーズにこなすかについて、
今後考えていけばいいだけだ。


思い出は大切に、今後の生活もおろそかにしない、
いいとこ取りみたいだが、悪いことではない。


後ろの景色を見ているとき、
必ず“喪失感”というものが顔を出してくる。


これは致し方ない。


人間の心は、
そういう構造になっているのだから。


喪失感を感じている間は、自分がまだ人間であるということだ。


そういう歩き方をして、
人生のゴールにたどり着いた暁には、
“いいこと”が待っているかもしれないのだ。

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