これからも妻といっしょに

がんで無くなった妻。その魂と引き続き共に歩みます

動かない “ガソリン車”

私は「車」、妻は「ガソリン」。


ガソリンがなくなった。
車は止まって、動かなくなってしまった。
どうしたら前に進むか。


電気自動車に乗り換えることも可能だ。
そうすることで、ガソリンがなくても、
前へ進むことが出来る。


それは、今の車を捨てるということだ。
言い換えれば、“生まれ変わる”ということだ。


言葉の響きはいい。


でも、そうすると、
前の車の思い出は消えていく、
もしくは少なくなっていくということだ。


前に進むことを選ぶか、思い出を残すことを選ぶか。


思い出を残しつつも、前に進むことだって可能だ。


しかし、
そうすると、思い出に浸る時間が削られてしまう感覚がある。


そこに留まって、窓から見える夕日を見ながら、
今まで通った道から見えた景色を、
思い浮かべる時間をたっぷり持ちたい。


私は、ガソリン車との相性の方がいいのだと思う。
このままでいい。止まっていていい。


前に進んでいない姿は、外から見れば、
とても見栄えの悪いものだろう。


乗り換えを勧める人もたくさんいるだろう。


目障りだという人もいるだろう。


「いつまで、そこに留まっているんだ」と言って、
イライラする人もいるだろ。


確かにそうだ。


過去にこだわることをやめ、
目線を前に向けた姿を見せることで、
周りは安心して、喜んでくれるだろう。


未来に重心を移せる人は、出来るなら、その方がいいと思う。
私も、“意識的”であれば、重心移動は可能だ。


でも、そうさせない“本能”の存在を感じる。


私は、
今までは、
人と関わっていく上で、調和を重要視 してきた。


でも、人生最後の選択は、自分のわがままをゆるしてほしい。


“人に迷惑をかけない本能”で、生きていきたい。


いずれ、
動かなくなった車の処分命令が下される時が来るだろう。
その時までは、この動かないガソリン車のままで過ごしたい。

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