見えるけど本物ではない。本物だけれど見えない。
1月20日、父親の四十九日および納骨のため、
空港に向かうための地下鉄に乗った。
向かいの列の斜め前に、キャリーバッグを横に据えた女性が座っていた。
朝早いので、向かいの列の座席に座っていたのは彼女だけだった。
ちらっと顔を見ると、私の2歳年上の田舎にいる姉に似ていた。
下を向いていたので、はっきりした顔はわからなかった。
少しして、彼女が顔を上げた。
本当に姉に似ている。瓜二つと言ってもいいぐらいだ。
世の中に、こんなに似ている人がいるもんだと、驚き感心した。
その時、思った。
妻に似た人に、まだ出会った事がないなと。
妻が亡くなって以後1年3ヶ月の間で
妻の魂らしきものとは、数回出会うことがあった。
しかし、視覚を満たしてくれるものには、
未だに出会っていない。
夢に現れる妻は、私の脳の中の出来事であり、
幻想で見られる妻は正に幻想でしかない。
2017年10月6日が、
肉体と魂が合体した妻を見る最後の日だったのか。
今後、肉体と魂が合体した妻との出会いは不可能なのか。
おそらく、両方揃った妻にこの世で出会うことは、もう無いだろう。
ならば、少しでもそれに近い形で出会いを求めるしかない。
以前撮ったビデオや写真の中の妻を見ること。
これは映像であり、妻そのものではない。
妻の姿を再生したロボットにAIを組み込ませたもの。
本物でないことは明かで
私の脳を騙すことは出来ない。
妻の魂が、より妻の姿に似た人に乗り移った状態で
私の前に現れたとしたら、
私の心の中で、いい意味の動揺が起こるだろう。
でも似てはいてても、その肉体は妻ではない。
幽霊はどうだろう。
これは本人そのものには間違いない。
他の人の幽霊は出てほしくはないが、
妻の幽霊であれば、大歓迎だ。