私は、これと言った特技はないのだが、
最近、
「特技かもしれない」と思えるものを見つけた。

それは、
泣いている子供を泣きやめさせる という特技だ。

「そんなの特技になるのか」と言われそうだが、
“資格”と違って“特技”は、独自の認証でいいと思っている。

私には、子供がいないことから、孫はいない。
なので、
赤の他人の子供に対して成せる技となる。

以前、電車の中で、
向かいの席に、
若い夫婦とその子供である男の子が座っていて、
男の子が大きな声で泣いていた。

お母さんは、周りを気にして、
何とか泣きやむよう男の子をなだめているが、
一向に泣きやむ気配がない。

若い夫婦と泣いてる子供の一体の情景は、
“家族”を感じさせ、
母親は困った顔をしているが、
私には、その光景が心地よく感じた。

それで、
男の子を見て微笑むと、
男の子はすぐに自分が見られているのことに気付き、
瞬時に泣き止んだ。

泣くのを忘れ、
なぜ自分を見るのだろう という感じで、
不思議そうにこちらを見た。

そして、好奇心いっぱいの目をして、こちらを凝視し始めた。

母親は泣き止んだ息子を見て、
その視線をたどり、私の方を見た。

次の駅で、母親は私にお辞儀をし、
その家族は電車から降りて行った。

これは一例だが、
他にもこれと似た経験が2、3度ある。

それで、
勝手に特技だと思うようになった。

子供の鳴き声を不快に思う人も多いと思うが、
私は、嫌いではない、というより好きな方だ。

その理由は、
赤ちゃんの「泣く」という行為が、
本能的であるからだと思う。