表情
“表情”は、心を映す鏡であって、
言葉の裏側にある見えにくいものを知る手がかりを、
提供してくれる。
言葉で、「好きだよ」と言われても、
言葉の裏側にある感情が、その言葉と一致しているかどうかは、
心の中を覗いてみないとわからない。
心の中は、本人にしか見えないから、
心の中を映す何かを見つけて、判断しなければならない。
「表情」は、その役目を果たしてくれる。
他に、判断出来るものとして、
声のトーンや、仕草などがあるが、
相手が、すごく上手く演じることが出来る人だったら、
騙されてしまうだろう。
「詐欺師対策」のような文章になっていますが、
普通の人どうしでの話をしています。
表情も、操作することは可能だが、
観察力があれば、作られた表情であっても、
ある程度は心の中を読み取ることが出来る。
私は、会った人を見て、
顔の形状からよりも、その人の表情で、
その人を好きになることが多い。
それぞれの人に、表情の特徴があり、
“表情”は、観察すると面白い。
妻の表情はどうだったか。
妻の表情にはインパクトがあった。
おどけた表情、怒った表情、哀しい表情、
どの表情も、私は好きだった。
「おどけた表情」を嫌う人は少ないが、
「怒った表情」、「哀しい表情」を見ると、
普通は、ネガティブな感情になると思う。
しかし、
私は、妻の「怒った表情」、「哀しい表情」に関して、
ネガティブには繋がらず、
“スゴい”という感情が先に立った。
何がスゴい のかと言うと、
妻は、どちらの表情をする時も、
私を凝視して、一切目をそらさないことだった。
その視線は、とても強く、
あたかも、私の目の中に入って来るのではないかと
思うくらいのものだった。
「怒っている時の顔」は、
“私”を怒っているのではなく、
“私がやった行為”を怒っているのは分っていたので、
私は、安心してその怒りを受け止めていた。
「哀しそうな表情」は、
私が妻に辛く当たった時、何度か見せたのだが、
その哀しそうな表情は、
「訴えかけるような表情」であり、「すがるような表情」であった。
その表情は、
今でも、はっきりとリアルな感じで思い出すことが出来、
思い出すと、胸が締め付けられる感覚になる。
妻が、ここまで強い表情が出せたのは、
私と真剣に向き合おうとする気持ちがあったからにほかならない
と思っている。
。