二人の連携で得た“今のマンション”
今住んでいるマンションに住み始めて20年になる。
それまでは会社の借り上げ社宅に住んでいた。
私は22年勤めた会社を辞めることにし、会社にもそれを伝えていた。
そのため、次の住まいを探さなければならなかった。
私は住まいの周辺で賃貸物件を探すことを考えていた。
その頃、妻は都心にある証券会社に契約社員として勤めていた。
通勤に1時間ほどかけていた。
ある日、私が帰宅すると、妻は私に「これどう」と言って、
中古マンションのチラシを見せた。
会社の帰りに、不動産屋に飛び込んでもらってきたとのこと。
そのチラシを見ると、ワンルームであった。
いくら何でもこれは住めない。
しかし妻は、涼しい顔をしている。
この妻の不思議な世界がなかなかいい。
しかし、その価格を見て、「あれっ」と思った。
築35年と古いためか、都心の割には安い。
そこで私は休日、妻が持ち帰ったチラシ物件近くに行き、不動産屋に入った。
私がチラシを見せると、そのワンルームがある同じマンションで、
1LDKの物件が売り出されていると聞かされた。
外は真っ暗になっているが、内見することにした。
そして、後日、妻にも見てもらったうえで決めることになった。
ローンを組んでも毎月の返済が、賃貸での家賃より少なくて済む。
妻は体力がないので、通勤に時間のかからないところであれば、
古くても狭くてもいいという人であり、この部屋で契約することに決めた。
値引き交渉もして少し安くなった。
妻が食材を用意して、私が料理をした、という感じだ。
田舎にいる姉は、私が“独り”になったことから、
「こちらに戻って来たら」と言う。
複数の不動産屋から、売却しないか という電話もかかって来る。
このマンションは、二人の思い出がいっぱい詰まっている。
遺骨も置いてある。
妻の唯一の居場所を無くする訳にはいかない。
ここに住み続けることは、私にとって大きな意味がある。
私が亡くなった後、どうするかについては、
これから、少しずつ考えていきたい。