これからも妻といっしょに

がんで無くなった妻。その魂と引き続き共に歩みます

おひとりさま

先日、
よく利用している共用スペースのあるビルのトイレに入り、
手を洗っていると、70歳半ばに見える男性が用を済ませ、
隣で手を洗い始めた。


そして、ちらっとこちらを見た後、
話かけてきた。


先日、この水栓からの水の出が悪いので、
ビルを管理している会社に連絡したら、
若い男性社員が来たので、配管を点検した方がいいのではと言うと、
その男性は、もう一つの水栓の蛇口をひねり、
「何も問題ありませんね」と言ってさっと帰って行ったとのことで、
その態度が良くなかったらしく、今の若い人へのイライラを私に話し始めた。


60代後半の私を見て、この人なら私の話に共感してくれるだろうと
思ったのではないか。


私にとってはどうでもいい話であり、
長々と聞かされたら困るなと思いながらも、
話を聞いた。


最初は、老人の怒りの受け皿役にされると思い、
ちょっとしんどいなと思ったが、


現役時代は、国家公務員であり、役職も付いていたとのことで、
予想に反して、理知的な話し方をされる人であった。


若い人は、苦労をしていないから、態度がああなるのだ
という話から始まった。
長い話の聞き役になるのかと思っていたが、
話は2~3分で終わった。


話をしている時、若い男性の会社員が2人、用を足していて、
話は、まちがいなく聞こえるので、


私は、最後に、その老人に対し、
「苦労が人間を作るんですね。若い人でも苦労をした人は、
ちゃんとしてますよね。」と言うと、
その老人は「そうだね」と言い、最後に「ありがとう」と言って
トイレから出て行った。


その後ろ姿に、なぜか哀愁を感じた。


「ありがとう」は、
話を聞いてくれて「ありがとう」ということだったのか。


この人は、「おひとりさま」なのか、奥さんとふたり住まいなのか。
いろいろ推測する。


一人暮らしだとしたら、話を聞いてくれる人が欲しかったのだろうか。
あるいは、奥さんはいても、話を聞いてくれないのか。

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