幸せは二度訪れるか?
人と初めて会った時、当然、その人は初めて会う人である。
しかし、
妻と初めて会った時、
どこかで会ったような不思議な感覚があった。
その後、付き合い始めて、
一緒にいると、
妻に対し、懐かしいという感覚さえもあったような気がする。
間違いなく初対面なのに、この不思議な感覚は何だったのだろう。
付き合い始めの最初は、
性格も嗜好もはっきりわかっている訳ではないので、
本来ならば、デートの前、
話題は何にしよう、デートの組み立てはどういう風にしよう
とか、事前に考えるものだが、
妻に対しては、
「会ってから考えればいいや」くらいに考えていて、
肩の力を抜いて接しても大丈夫な気がしていた。
それまでに、見合いや恋愛で会った人に比べて、
構えることなく、会っていて楽だった。
夫婦の生活が始まってからも、
この感覚は変らなかった。
そして、
24年半の夫婦生活の間、
“浮気”、“不倫”という文字が、
わずかであっても、私の頭の中に浮かぶことは1度もなかった
妻も、自分の残りの人生を、私に賭けていた風なところがあった。
多分・・・。
妻は、私の部屋に入ってきて、私の顔をまじまじと見て、
「飽きないのよねえ」と言ったことがある。
私も、妻に対して、“飽き”を感じる瞬間は、一度もなかった。
そう考えると、
一定の期間だったが、
神様は、幸せな人生を提供してくれたなあ とつくづく思う。
こんな幸せな人生を知ってしまったため、
私は、少し貪欲になった。
“次の幸せ”がほしくなった。
それは
予期せぬ時に、不意をついて、現われるような気がする。
私が亡くなる瞬間なのだろうか。
これが、
私の、残された唯一の欲望なのだが・・・。