これからも妻といっしょに

がんで無くなった妻。その魂と引き続き共に歩みます

結婚式

私は、過去の映像を集めて編集して、妻の動画を作っている。


2時間ほどの結婚式の動画をトリミングして、
18分ほどに短縮されたものにしている。


その作業をしていると、
若い時の自分に、一瞬であるが戻っている感覚になる。


作業は止まり、
気が付いたらその映像に見入る時間が長くなっている。
ここから妻と私の24年半が始まったんだ と思うと
特別な映像として見てしまう。


当然ながら、私も妻も両親も友人も、みんな若い。
晩婚だったので、38歳の時の映像であり、
31年前の映像ということになる。


どの人も、そうなのだろうが、
結婚式に出席している人の表情は皆笑顔で、
その人にとって、一番いい表情になっている。


笑顔だらけの映像の編集作業をしていると、
過去にタイムスリップした自分がいて、
幸せ世界の中に、自分の体が吸い込まれているのがわかる。


さすがに、この時ばかりは、
“喪失感”は横に置かれた状態となっている。


今考えてみて、
結婚式を挙げてよかったと、つくづく思っている。


どういうことかと言うと、
結婚が決まった後、妻は、
「結婚式は挙げなくていい」と言っていた。
さらに、
新婚旅行先は、行くにしても、「飛行機が怖いので、国内がいい」と言っていた。


私も、結婚式に特にこだわっていなかったので、
妻の言葉を聞いて、最初はやめようかと思ったが、


お互いの両親のことを考えると、
やっぱり挙げた方がいいと判断して、
式を挙げることにした。


挙式を挙げるホテルで、
ウエディングドレスを選んでる妻の真剣な姿を見て、
私は、
妻は、“本当は結婚式を挙げたかったんだ” ということがわかった。


新婚旅行は、
妻の意見に従って、私の車で近場の山梨を回ったのだが、
12年後、二人で香港旅行をしている。


あれ、飛行機が怖かったじゃなかったのか?
飛行機に乗らないといけない海外旅行は、断わってくるだろう
という予想に反して、妻はすんなり受け入れた。


このように妻は、
「発する言葉」だけで判断してはいけない人だということがわかった。
“妻の心の中”を読み取る力を身につけないといけないと思った。


妻ががんの告知を受けた直後にも、この妻の特徴が出た。
「私が亡くなったら、いい人を見つけて再婚して」と、妻は私に言った。


私は、そんな気は毛頭ないと思っていたが、
「一人になる私のことを心配して言ってくれてんだ」と解釈して、
妻の言葉に、返しをしなかった。


でも、
数分経って、妻は「やっぱりしない方がいい」と
私に聞こえるか聞こえないかの小さな声で、ひとり言のようにつぶやいた。


私は「そうなんだ」と思った。


でも、妻の本音が聞けて嬉しかった。

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