これからも妻といっしょに

がんで無くなった妻。その魂と引き続き共に歩みます

癌 告知から亡くなるまで 妻と過ごした137日 ④

妻と別々に寝ている時期、妻は「蝉がいつも同じ時間に鳴き出すのよ」と言っていた。
妻の部屋の窓からは大きな木が見え、そこから蝉の鳴き声が聞こえる。
5月27日、いっしょに寝ていて夜明け前、蝉が鳴き始めた。
妻が言っていた時間ぴったりの4時半だ。


妻は「蝉さん、目覚ましが無いのにえらいね。」と可愛くつぶやいた。
妻はそういう何気ない現象を見逃さない所がある。


ベッドでふたり並んで会話をしている中で
「私が受けようとしている在宅医療のモデル、
のらちゃんが将来介護が必要になった時の参考になるよ。」と言った。
本人はこんな状態なのに、夫の今後のことを気遣う。
あくまでも冷静だ。


「日々弱っている感じがする。可能性を求めて頑張る人が多いけど、
自分は短い期間で早く終わりたい。老老介護大変だよ。」
とも言った。


その後、妻は、今日も部屋内の整理を休みなく行った。


午後、喧嘩をした。


「口から歯磨きの匂いがする、うがいをしてないだろう」というもの。


以前、夜、疲れていて歯磨きをするのが面倒くさくて、
歯ブラシを使わず、指に歯磨き粉をつけて歯に塗りつけただけの行為が
よっぽど気に障ったのか、激しく攻撃してきた。
それ以来、私が歯磨きをしたあと、「うがいをしていないだろう」
としつこく言ってくる。
あの日以来、うがいはしているのだが、あまりにしつこいので喧嘩になった。


夜、妻に10万円の生活費を渡した。


我が家は、お金の管理を私が行っており、
今までは妻に毎月5万円を渡していた。


妻は料理をしないので、食事はそれぞれが別々にとっていた。
妻は時計やラジオ、衣装ケース等、同じものをいくつも購入する習性があった。


もう少し考えて買い物をして、倹約に協力してほしいと何度も妻に言うことがあった。
妻は反発して、よく喧嘩になった。


倹約の目的は、ふたりのより良い老後の生活を考えてのことだったのだが、
その目的について、ずっと話さないでここまで来てしまった。
話していれば、妻の性格から考えて、倹約に協力していたと思われる。


これは、いくつかの悔いの内の1つだ。


この状態で妻は10万円を使うことは無いだろうが、
申し訳なかったという、気持ちの証として渡した。


妻が亡くなった後、部屋の整理をしていて、タンスの引き出しの中から、
お金の入ったビニール袋を見つけた。


その袋には、「のらちゃんからのお小遣い」と書いてあった。

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